2007-05-07

合成の誤謬

資本主義社会は簡単に言うと、一人一人が自分の富を増やすために努力することで、社会全体の富が増えるシステムですが、必ずしもこの仕組みがうまく働かない、つまり一人一人が自分の利益を優先することで結果的に全員が損をすることがあります。これを経済学の用語で合成の誤謬(ごびゅう)と言います。

統計学Iの教室の近くの自転車置き場では、殆どの人が自転車置き場の手前の道路に自転車を置いています。一人一人の行動としてはこれは合理的です。奥の自転車置き場に自転車を置こうと思うと、まず手前の自転車を整理して自転車が通る隙間を作らなければなりません。後で自転車を出すときのことを考えると、その隙間を通って奥へ行くより、隙間そのものに自転車を置いた方が良いです。
しかし全員がそう考えた結果、奥の自転車置き場はガラガラ、手前の通路は駐車自転車が多くて狭くなり、全員が困ります。

そのような非合理的な不便さを解消する方法として、自転車置き場をもっともっと増やすとか、自転車整理員を雇うとか考えられますが、そんなことをしなくても全員がほんの少し考え方を変えるだけで解決できます。自転車を出すときにも隙間を作る手間をかけても良いかな、って思って自転車を奥の自転車置き場に置けば、結果的に手前に置かれる自転車は無くなって(だって奥の自転車置き場はガラガラで、手前に置かれた自転車を全部置くことが出来ます)、出るときに隙間を作る必要もないし、通路も通りやすくなります。

合成の誤謬を解決するポイントは、皆が自分と同じ行動をとったときに、全体としてどうなるかを考える発想力です。

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