2007-12-04

ゲーム論的確率論と数理ファイナンス

無リスク金利で運用する場合、単利より複利の方が増えるのですが、リスク資産へ投資する場合、一般的に評価に使われる期待値、つまり相加平均よりも複利に相当する相乗平均の方が小さく、さらにレバレッジをかけてリターンのばらつきが大きくなると相加平均と相乗平均のの差が大きくなりますのでリターンが小さくなることがあります。

例えば、ある年の運用成績が+12.5%、翌年が-10%だったとき、複利計算では1.125*0.9=1.0125で+1.25%ですが、では儲かるからとレバレッジをかけてみると、
2倍のレバレッジをかけていれば+25%と-20%で1.25*0.8=1で0%ですし、
3倍のレバレッジをかけていれば+37.5%と-30%で1.375*0.7=0.9499で-5%です。

そこで、リターンの分布に応じて、複利での運用成績を最大にするレバレッジを求めようという考え方がoptimal-fやKelly基準で、ゲーム論的確率論では最適解は次の同値な3つ問題として定められます。
・相乗平均の最大化
・リターンの対数の平均の最大化
・効用関数が対数関数である場合の効用の最大化
上記例では、1倍のレバレッジ、つまり+12.5%と-10%が最適です。

私が把握している注意すべき点は2つあります。
  1. この方法で得られたレバレッジは言わば合理的な範囲での上限であり、
    これよりレバレッジが低いとリターンも下がりリスクも下がりますが、
    これよりレバレッジが高いとリターンも下がりリスクは上がります。

  2. これが私が一番興味を持っている部分ですが、
    実際の運用では将来のリターンの分布は未知であり過去のデータから推測する必要がありますし、
    またギャンブルのように好きな回数だけ試行できるわけではありません。従って
    • 過去のリターンと、リターンの確率分布との差
    • リターンの確率分布と、将来に実際に得られるリターンの分布の差
    を考慮する必要があります。
    1.のようにレバレッジが高すぎる場合のほうが問題が大きいので、この差のために低めにすべきだと思いますが、具体的にどう計算してどれくらい小さくすれば良いのかということに興味があります。
    数値的にはブートストラップで求められると思いますが、その場合の破産確率などを理論的に評価出来ればと思います。
運用以外での応用としては、対数効用関数を考えることで保険の合理性の話につながるかなと思います。一般的な期待値ですと加入者の損が保険会社の利益ですが、対数効用関数だと両者にとって利益になるということです。

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