2010-08-24

SONY α55

ソニーのα55が色々面白い特徴を持っているので整理します。

半透過ミラー

レンズから入ってきた光を半透過ミラーで二つに分けます。70%は撮影用素子に、30%は位相差AFセンサーへ。
普通の一眼レフデジカメのような光学式ファインダーはなく、LumixGシリーズのように背面液晶や電子ファインダーを使って写します。
LumixGシリーズ、NEXシリーズとの違いは、位相差AFが使えることで、特にピントを合わせ続ける必要がある動画撮影に有効です。NEXを店頭で使った感じではセンサーが大きい分被写界深度が浅く、そのためコントラストAFは遅くてちゃんと合う前に諦めているような感じで、「小さく作ったのは凄いけど、くっきりと写らない」という印象でした。明るい屋外ではちゃんとピントが合うようです。 その点、α55,α33なら位相差AFセンサーがあるのでオートフォーカスは速いと思います。
普通の一眼レフとの違いは、撮影中でも位相差AFが使えることで、動画撮影には優れています。写真を撮るには、光学ファインダーがないので速いものを追いかけるにはLumixGやNEXと同じく若干不利です。
半透過ミラーにより若干ですがゴーストが出るようですが、昼間なら気づかないと思います。

動画

撮影中に位相差AFが使えるという点では、民生用では最も優れています。動画が一回29分までというのはEU向け輸出でそれ以上記録できるとビデオカメラとして扱われて関税がかかることへの対策ですが、ビットレートが17Mbpsまでなのですね。NEX-VG10だと同じ1920×1080で59.94i記録/29.97fpsセンサー出力でも24Mbpsまで出来るのに。これはEU向け制限ではなく、NEX-VG10との差別化ですね。

小型化

一般的な一眼レフカメラと比べると、光学ファインダーのためのペンタプリズムがない分小さくできます。
LumixG, NEXと比べると、位相差AFセンサーに光を導くミラーが必要なので大きいです。
大きさも重さもLumixG, NEX<α55,33<普通の一眼レフという順番です。

ノイズ

半透過ミラーによる撮影素子への光の減衰は70%=1/√2なので半段です。海外で同じ日に発表されたα580がα55と同じセンサーですので、α580と比べれば、半段低い感度で高感度ノイズが同じになります。これらのセンサーの性能はまだ見ていないので分かりませんが、最近のデジタル一眼レフの感度は充分高いので、半段落ちても問題ないと思います。
暗部ノイズが気になるのは昼間、明暗差が大きい時に、明るい部分が白飛びしないように露出を絞って撮った時の暗い部分のノイズです。これに関しては、半透過ミラーにより明るい部分も同様に半段暗くなるわけで、単に露出の絞り方を半段減らすだけのことですから、半透過ミラーがあっても暗部ノイズが増える要因にはなりません。

連射

1秒間に10コマ写せますし、その間も位相差AFが使えます。但し最高速で写している間は撮影素子が撮影だけに専念しますので、背面液晶や電子ファインダーに「これから写そうとしている画像」を表示できなくなり、既に写した写真だけを後追いで表示するだけです。ですから動くものを追いかけて撮るには撮影者の技術が必要になります。他のデジカメでは撮影者の技術があっても機械的に無理だったので、撮影者に技術があれば可能、というのは優れていると言えなくはないのですが、実際に役に立つのは連写した画像を合成して低ノイズの画像にするマルチショットNRでショット間の時間差が少なくなるくらいでしょう。でもこの使い方ならAFが動作し続ける必要はないわけで、やはり半透過ミラーを使った長所は動画撮影時の位相差AFでしょう。
むしろミラーが動かないことにより、手ブレが少なくなるのではないかと期待しています。

手ブレ補正

センサーを動かすタイプの手ブレ補正機能があります。でも動画撮影時は発熱し続けるセンサーをずっと動かし続けることに無理があって、手ブレ補正をONにすると連続撮影時間が9分になります。シグマなどのレンズ内手ブレ補正が出来るレンズを使った方が良いでしょう。

GPS

GPSロガーを持ち歩かなくても位置情報を記録できるのは便利です。 でも以前ソニーのGPS-CS3Kを買って、なかなか受信しないし受信しても誤差が大きいし電池も持たなくて嫌になました。安い小型GPSって使い物にならないなと思ったのですが、ネットで評判の良かったi-Blue 747A+に買い換えてみたら、ソニー製の半額なのに電源を入れてすぐ受信するし正確だし電池は持つしでその性能差に唖然としたことがあります。だからα55のGPSがどれくらい使い物になるか、実際のところ使ってみなければ分かりません。

感想

デジタル一眼で動画を撮るなら現時点で一番良いです。その意味でLumixGH1やその後継機を考えていた人はこちらが良いと思います。小さいのが欲しい人はLumixGF1やNEXを買うわけで、GH1を買う人は少々大きくてもいいから撮影機能に優れたデジカメが欲しいわけで、そうなるとGH1よりちょっと大きくても動画撮影中に位相差AFが使える点は大きいです。発売されて考えが変わりましたので、後の追記を読んでください。
静止画だけなら、新しい方式の1号機ということもあり、特にメリットはないと思います。小さい方が良いのならLumixGシリーズが、ミラーがない分小さくて、マイクロフォーサーズレンズならコントラストAFも充分速いです。大きくても撮影能力が高い方が良いのなら、普通の一眼レフの方がファインダーのタイムラグがないし、写した瞬間にファインダーが見えなくなる時間が短いです。この点は次の世代の機種でだんだん良くなるでしょう。
今のところは、目新しい機能が多いので、友達が買ったらちょっと触らせてもらいたいとは思いますが、それだけかなぁ。

追記

現物を見てきました。

オートフォーカス

電子ファインダーを覗くと常にオートフォーカスが作動しピントを合わせ続けるアイスタートAFがあります。
他の一眼レフの場合、普段はオートフォーカスが作動しておらず、
シングルAFモードの場合は、シャッターボタンを半押ししたりAFボタンを押した時点でオートフォーカスが作動してピントが合った時点で固定され、
コンティニュアスAFモードの場合は、シャッターボタンを半押ししたりAFボタンを押した時点でオートフォーカスが作動してその後も被写体の距離の変動に合わせてオートフォーカスが作動し続けます。

ところがα55の場合
シャッターボタンを半押しにしなくても電子ファインダーを覗くだけでオートフォーカスが作動していて、
シングルAFモードの場合は、シャッターボタンを半押しした時点でピントを合わせて固定され、
コンティニュアスAFモードの場合は、シャッターボタンを半押ししても継続して被写体の距離の変動に合わせてオートフォーカスが作動し続けます。

シャッターボタンを半押しする前からピントを合わせていますので、シャッターボタンを押してすぐに撮ることが出来て、その意味では速いのですが、
急にカメラを大きく動かしてピントが合っていない状態から撮ろうとすると、オートフォーカスが遅いです。

ファインダー

電子ファインダーなので、色々な情報を重ねて表示することが出来て便利です。
単射モードだと、写した一瞬だけ画面が真っ暗になります。ライブビュー用に開いていたシャッターを、撮影のために一旦閉じて撮影用に開閉して、それからもう一度ライブビュー用に開くまでの時間です。これは原理的にマイクロフォーサーズと同じですし、普通の一眼レフでも理由は違いますが写す瞬間は一瞬真っ暗になります。
連射モードにすると、真っ暗になるのではなく、一瞬前に写し終わった画像が表示されます。動くものを撮るには技術が要ります。

使ってみた感想

動かないもの、ゆっくり規則的に動くものを撮るなら、ずっとファインダーで追い続ければ撮れますし、その間もオートフォーカスが作動し続けるのがこのカメラの最大の長所です。
でも空を飛ぶ鳥を撮るには、電子ファインダーのタイムラグ、オートフォーカスの速度などの点で相当の技術が要りそうです。
その意味でソニーα55と一緒に | 楽園写真家三好和義公式ブログ
> 今までにこんな写真撮れなかったのに!
とか
> 今までは撮れなかったものの一つだが、
> このカメラさえあれば簡単に撮れてしまう。
なんてことはないでしょう。三好さんは綺麗に撮っていますが、このカメラで簡単に撮れる人なら普通の一眼レフならもっと簡単に撮れます。あまりに古い機種ならともかく、最近のニコン機ならどれでも。
ソニーは最近はα700やα900クラスを発売していませんから、本当に今までのソニーの機種では撮れなかったのでしょうか。まさかそんなことはないと思いますので、発売前の8月27日に使わせてもらっているのでこうしか書けないのでしょう。

結論

動画をとるなら現時点で動画撮影中に位相差AFが使えるのはこれだけです。写真を撮るなら、シャッターボタンを半押しする前からピントを合わせているのですぐ撮れる点は他より優れています。他は可もなく不可もなく、普通のカメラです。

10月1日追記

α33/55 動画記録時間に関するお知らせ
機種名 環境温度 手ブレ補正
[入]時 [切]時
α55(SLT-A55V) 20℃ 約9分 約29分
30℃ 約6分 約13分
40℃ 約3分 約5分
α33(SLT-A33) 20℃ 約11分 約29分
30℃ 約7分 約22分
40℃ 約4分 約9分
気温が高い場合、最初の公表値より撮影時間が短いですね。29分というのは上にも書いた、EU向けにビデオカメラ関税がかからないための制限ですが、それより短い部分はセンサーの温度上昇による制限です。この場合、一旦温度上昇により録画が止まると、温度が下がるまで録画できません。特に気になるのは手ブレ補正なしでも気温30度だと13分しか撮れないことです。手ブレ補正のためにセンサーを動かさなくても温度上昇により撮れなくなるということは、ライブビューでも温度が上がるのではないか気になります。
発売前に動作原理などから上の方で「動画ならGH1よりこちらが良い」と書きましたが、実際に発売されてみたら予想外の制限があったわけで、GH1や後継機のGH2の方が良いですね。
また、連写中に位相差AFが効くのがメリットなのですが、位相差AFの制限で絞りをF5.6より絞ると位相差AFが使えません。
私は最初気づきませんでしたが、言われてみれば当たり前のことで、発表前に試してみれば分かることなのですが、使ってみなかったのでしょうか?

10月7日追記

さらに使用可能時間が短くなりました(正確には気温40°の場合はさらに短いことを公表。公表前から推測されたことでしたが)
ソニー、新規格「MICROMV」採用の小型ビデオカメラ ―世界最小最軽量を実現、単体でのインターネット接続も可能昔はこんなのも作っていたのですね。

2011年1月7日追記

動画の記録可能時間を、発売後に短く修正するのはいただけませんが、α55の受光素子はNikon D7000やPentax K-5と同じで現在のAPS-C用では一番優れています。そして今ならα55はD7000やK-5よりかなり安く買えますし、ミラーを動かす機構とかペンタプリズムがないので重さも相当に軽くてバッテリー込みで500gです。さらにミラーが動かず密閉されているのでレンズ交換時の埃の侵入にも強いです。とりあえず動画のことは忘れて、安くて小さくてD7000と同じ受光素子で屋外でのレンズ交換も平気と考えれば良いカメラです。特にSONYは手ごろな単焦点レンズが多いですしボディ内手振れ補正なのでどのレンズでも手振れ補正が効きます。
amazonでの価格比較だと、D7000だけはレンズのズーム域が広いのでちょっと高いですが、それを差し引いてもα55だけ突出して安いです。

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