汎用現像ソフトということで主にLightroomとの比較になります。結論を先に書くと、Lightroomより良いと思います。ただ個人的好みとしてはDxOの方が、明暗差が大きい写真で白飛び、黒潰れを減らすためにコントラストを落とした時にも彩度が下がらないように工夫してくれるので、DxOが対応しているボディならDxOを使います。
オートホワイトバランス
昼間屋外なら5200Kに固定するという手もありますが、屋内で人工照明の場合はオートに頼った方が無難です。昼間でも、窓越しに写す場合にガラスの色を補正するのに使います。ところが、入射光式色温度計を使わずに画像だけで判断する場合、被写体に当たる色が偏っているのか被写体の色が偏っているのか判断するのは難しいですので、各社腕の見せ所になります。正解がわかりやすく、かつ被写体の色が偏った例で比較します。
Lightroom
安物デジカメのオートホワイトバランスでもここまで酷くないです。単純に画像を平均化してニュートラルグレーになるように調整しているだけのようです。画像処理を習いたての学生の練習問題並みです。
Lightroomのホワイトバランスは他にもおかしなところがあって
・昼光プリセットが5500K(他の現像ソフトだと殆ど5200K)、曇天プリセットが6500K(他は6000K)
・デジカメで昼光に設定した画像と同じ色にするには4700K~5000Kに設定する必要がある
これらの問題のために、Lightroomのホワイトバランスは自動もプリセットも使えず、「撮影時の設定」にするか、数字で色温度を入れなければなりません。
同じ画像でプリセットを使った場合の比較。
Silkypix(快晴:5200K)
Silkypixの他の長所として、特殊な照明で人の顔が変な色になった写真でも「この部分が肌色になるように調整して」と指定すると、そこに合わせてホワイトバランスを調整してくれます。他のソフトでは「この部分が灰色ですよ」という指定しか出来ません(Silkypixはこの指定も出来ます)。人の顔が写っている写真なら、F4キーを押してから肌色の部分をクリックするだけで調整してくれるので、とても便利です。
光源のプリセットも多く、しかもプルダウンメニューから選ぶとき、マウスを合わせるだけでクリックしなくてもその光源で処理した画像を見ることができますので選びやすいです。
ホワイトバランスの合わせやすさという点で自動、手動選択共、これまで使ったソフトの中で一番良いです。
明るさ補正
明るさを調整して、白とび、黒潰れがないように調整する機能に関してはLightroomの方が優れています。まずはLightroomで単に「自動補正」をクリックしただけの画像
左側の融けかけた雪の濃淡も表現され、右側の白飛びも目立たなくなっています。
同じ画像をSilkypixで処理すると、明るさをSilkypix評価測光に任せただけでは
雪が真っ白になり、濃淡が表現されません。
ここで露出を-1EVにすると
雪の濃淡は表現されますが、右側の白飛びの境界が目立ちます。
ここでSilkypixの特徴であるハイライトコントロールを使って色彩重視にすると、
右側の白飛びは目立たなくなりますが、雪の濃淡が表現されなくなります。
困ったことに、これ以上暗くしても、コントラストを下げても、ダイナミックレンジ拡張を使っても、白飛びして濃淡が表現できなくなったまま、白が灰色に変わるだけです。
要するにSilkypixのハイライトコントロールの色彩重視、輝度重視とは、色彩か輝度のいずれかをLightroom以上に表現するためではなく、いずれかをLightroom並みに表現するために他を諦める、という感じで、この点に関してはLightroomの方が優れています。
但し、Silkypixの明るさ調整の問題は逆光や露出ミスでなければ殆どの写真では問題ないのに対し、Lightroomのホワイトバランスの問題は撮影時にきちんと設定しておかない限り殆どの写真で色温度を数値で入力しなければならず、両方合わせて考えてみればSilkypixの問題は大したことありません。
追記:問題は大したことない、と思ったのですが、どんなに調整しても変なこともあります。Lightroomの色温度の問題は自分で「晴天なら何度」などを決めておけば解決しますので、その方が良さそうです。
Silkypixの評価測光にはもう一つ問題があって、折角の自動化機能なのに明るくなりすぎることがあります。コントラスト「標準」だと白飛びし、「やや軟調」にすると黒が浮きます。ハイライトコントロールに自信があるからそうしているのかもしれませんが、自信過剰に思えます。露出補正の微調整を行って -0.5EV程度にするという手もありますが、今度は逆光の時に暗くなりますので、コントラスト「標準」でダイナミックレンジ拡張を1段にすることで対処すれば良さそうです。ハイライトコントロールはデフォルトが一番バランスが良く、そこから何かを重視すると他がもっとおかしくなりますので、特別に何かを重視しなければならない写真以外、デフォルトから変更しない方が良さそうです。ハイライトコントロールで何とかできる部分と、どうにもできずに白飛びしてしまう部分の境界が見えて不自然ですので、いっそのこと何もしないでくれる設定があればよいのですが。Lightroomと両方持っているならまずLightroomで現像して、ホワイトバランスが問題ないならそのままJpegで保存、オートを使いたいならTiffで保存してSilkypixで修正、でも良いかもしれません。
収差補正
最近のレンズは、画像処理で補正できる歪曲収差は光学的には補正せず、画像処理で補正できない収差の補正に力を入れています。Silkypixでの補正は、マイクロフォーサーズ以外は手動で補正量を設定しなければならず、ズームレンズは焦点距離によって補正量が変わってきますので、現時点のSilkypixでは補正が難しいです。ですので、DxOが対応しているボディ、レンズなら収差補正が自動でかかるDxOの方が良いと思います。他にもNikonやCanonの純正ソフトは自社製レンズの補正がかかりますし、Lightroomも今後は補正がかかるレンズが増えそうです。
色
青の彩度が高すぎます。特に紅葉の隙間から見える青空とか。「記憶色」に設定したのなら当然かもしれませんが「標準色」でも彩度が高すぎます。
ちょっと古いですがSILKYPIX Developer Studio 3.0β BBS [One Tree All Message]には
> SILKYPIXの標準色は忠実な色再現を基本としております。忠実な色再現は通常は誰も望みません。プロもアマチュアも記憶色を望んでいます。ここで難しいのは標準色の答えは1つしかありませんが、記憶色の答えは無数にあるということです。
> SILKYPIXがあえて記憶色を基準としなかったのは、好みにより好き嫌いが分かれることを恐れたわけではございません。色作りの基本は標準色からと考えているからです。標準を知った上で好みの記憶色に色づけして欲しいと考えております。
と書かれていますが、あの青は標準ではないでしょう。
レース写真で比較するRAW現像ソフト その4 - 『Joppa and webgpe Life with photographs』でも検証されているようにSilkypix独特の色表現です。
結局、DxOが対応しているならDxO、対応していない場合、Nikon, Canonは付属あるいは純正ソフト、Panasonic, Pentaxは付属ソフトがSilkypixの前のバージョンとかエンジンだけ利用なので、付属ソフトで物足りなければSilkypixの製品版が良いと思います。
DNGへの対応に関してはSILKYPIX® Developer Studio SOFTWARE MANUAL
追記:その後色々な写真を現像して感じたのですが、やはりSilkypixは青の彩度が高すぎる点や、ハイライトの処理がおかしい等、現像時の調整が大変な点、どんなに調整しても直らない問題があります。
私はDxOが気に入っていますが対応機種が限られますし、無難なのはLightroomでしょうね。
0 件のコメント:
コメントを投稿